~SC~~SC(スクランブル)~・・・・それは何の前触れも無く突然訪れる・・・・。 「ジリリリリリリ~~ ビーーッビーーッ・・・・」 けたたましいベルの音が鳴り、反射的にベッドから飛び出した。 パニックドアに体当たりしながら全速力で機体へと走り出す。 「ゼロワン スクランブル!!」 腰に引っ掛けていたヘッドセットを無意識に頭から被り、機体の正面へと向かう。 ふと見ると、ハンガーはすでに半分近く開き始めている。 機体の方を見ると、パイロットはすでに梯子を駆け上りコックピットで ヘルメットを被っているところだ (久々に・・・当たったな・・・・) 心の中でつぶやいた・・・・・・。 最近、自分がアラートに就いた時は運がいいのか悪いのか 何故か「ホット」がかかる時は無かったのだった。 機種正面、定位置につく。心臓の鼓動が早い、ドクドク鳴っている・・・ 走ってきたからなのか?それとも緊張しているのか・・ なにやら口の中が酸っぱいものでいっぱいになってくるのが分かる。 ピーンと張り詰めた空気の中で、やけに心臓の音だけが大きく聞こえてくる気がする・・ パイロットが右手を出し、人差し指が出される。 「ワンフィンガー」 E/G始動の合図だ。 すかさず自分もNo1E/Gを指差し、左人差し指を上げる コンプレッサーに張り付いている仲間から間髪入れずに親指が上がる。 「サムアップ!」 OKのサインだ。 パイロットからはコンプレッサー要員は見えない位置にいるので自分がOKを出す それを見たパイロットはすぐさま「ツーフィンガー」で手先を回し始める。 「ゼントエアー」 同時に自分もツーフィンガーで仲間に合図をだす。 コンプレッサーホースに高圧エアーが流れだす ムチの様にうねりながら、E/Gへと流れ込んでいく・・・・ パイロットの指が「グー」になった 「エアーイン。」 パイロットは計器類とにらめっこしているはずだ。 人差し指が立つ。 「ワンゼロ」 RPMが10%を指した合図だ イグニッション、スロットルをアイドルまで移動させる。 パイロットに合わせて自分も同じ動作をして他の仲間に状況を伝える。 「ツーゼロ」 ハイドロプレッシャーが上がり始める・・ パイロットの指先を注視しながら、自分は機体を見渡して確認していく。 自重で垂れ下がったスピードブレーキと、スタビが定位置に動くからだ 万に一つの異常も見逃さない、それが命取りになるからだ。神経が研ぎ澄まされていく 「スリーゼロ」 ボーンッと腹に響く振動が伝わり、ターボファンE/Gは自力で回り始めてきた ここでTGT(排気温度系)は急激に上昇してゆく。 「エアーカット」 手を横に切る合図。 コンプレッサーOFF。 すかさず機体下部に潜り込みダンプバルブをR/Hの位置にする。 パイロットは計器類をチェックして異常がないか確認している。 すぐさま2本指だ。 No2E/Gの始動をさせる。 「ゼントエアー」 「エアーイン」 「ワンゼロ」 「ツーゼロ」 「スリーゼロ」 ・・「エアーカット」 「APUアウト」 機体からコンプレッサーホースと電源プラグを引っこ抜く。 「OK!」 「エアーブリードバルブクローズ」 スロットルを押し上げ、ブリードバルブが閉じるまでパワーを上げてゆく。 これはSC(スクランブル)だ、実戦なのだ。 一時を争うなかで、多数のシーケンスを精密機械のように処理してゆく 翼端灯が灯り、航空灯が回っている・・・ (離陸だ・・・・・・・・) 緊張の糸がはりつめてゆく・・・・・・。 |